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2020.08.18

世界から見る、ライブ配信サービスの現状とこれから

新型コロナウィルスの影響により、対面イベントに代わる新たな情報発信手段としてライブ配信が世界中で注目されています。今回はビジネスにおける活用シーンや、私が思う「ライブ配信のこれから」についてお話していきたいと思います。

ライブ配信の現状

BtoBマーケティングにおける動画コンテンツの活用が広がりを見せている中、オンラインのビジネス活動が活発になっていくことが予想されています。実際、企業向けのライブ配信サービスはどこまで普及しているのか、どのように使われているのか、使用率の高いプラットフォームについてご紹介いたします。

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ライブ配信の普及率

<動画は他のどのコンテンツよりも見られるようになる>
マーケティング先進国である米国では、多くのスタートアップ企業が様々な手法を駆使して、BtoBマーケティングに積極的に取り組んでいます。これらは、「インバウンドマーケティング」や「コンテンツマーケティング」などと呼ばれ、その取り組みとして、企業ブログやホワイトペーパーが多く活用されてきました。しかし、2020年5月に米国core dna社により発表された調査データからこのような結果が得られました。

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引用:米国core dna社

上図は、米国企業がマーケティングにおいて注力するコンテンツのジャンルに関する調査データです。ブログの次に「動画コンテンツ」が多く活用されることが分かります。またライブ配信コンテンツの視聴者も増え続けており、回答者の80%が「企業が発信するライブ配信コンテンツに対して強い興味を持っている」という結果が出ています。さらに、米国のライブ配信サイトVimeo Livestreamにより、Vimeo既存ユーザーの81%の「ライブ配信コンテンツを視聴する頻度」が前年より上昇していることが発表されました。
(※参考: https://www.coredna.com/blogs/content-marketing-trends#2

そして2019年は、米国でのインターネット上の情報量の85%が動画になり、SNSをはじめとするブログ投稿の情報量を上回っています。
(※参考: https://livestream.com/blog/62-must-know-stats-live-video-streaming

<日本でも市場規模が拡大すると予測されています>
日本国内でも「ライブ配信」の認知が拡大し、一般層にも認知されるサービスとなっています。さらに具体的に年齢別の利用状況を確認すると、ライブ配信サービスを利用している40代人口の約半数は、動画を配信した経験があると回答しています。

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引用:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によりますと、ライブ配信で発信している内容は、自身がトークする様子やゲーム実況が多く占めることが分かります。また、ライブ配信市場で特に視聴数の高いジャンルは10代~20代に人気のある「ゲーム実況」であり、全年齢層でバランスが取れています。一方、音楽、お笑い、スポーツといったジャンルでは若い層よりも30~40代が多くの視聴数を占めています。

主流となるプラットフォーム

では、ライブ配信を行う際によく使われるプラットフォームはどのようなものがあるでしょう。国内外で認知度の高いプラットフォームをいくつかご紹介していきます。

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<YouTube Live>
大手動画配信サービスのYouTubeが提供するライブ配信フォーマット「YouTube Live」。誰でも気軽に視聴・配信ができるほか、企業や行政によるライブ配信でもよく使われています。

メリットとして、ユーザー数が多くかつ利用目的も多種多様で、幅広いターゲット層に発信しやすいという点が挙げられます。そして操作方法も単純であり、初めて配信する方にはおすすめできるフォーマットだと思います。

<Facebook Live>
Facebookは基本的には実名登録のため、アカウントを名刺代わりに使っている方も多いのではないでしょうか。企業アカウントでページを作成して動画を配信すれば、同業界の方にリーチしやすいという特徴があります。また、社内カンファレンスを開催するにあたって、遠方のため参加できないという方に向けてライブ配信するという使い方もあります。

逆にビジネス用途として使ってはいるものの、実名登録ということでそもそもアカウントを持っていない方もいることから、不特定多数の方に向けての配信には弱い面があるとも言えるでしょう。

<Vimeo>
2017年にLivestream(※1)に買収され、認知度が一気に拡大したVimeo。独自のハードウェアで再生プレイヤーを構築しているため、映像の画質が安定しており、スムーズな動画視聴ができるという点が大きなメリットです。

月額7,500円のプレミアムプランを利用すれば、視聴者数が無制限になる上、大容量のストレージ(7TB)が使用可能となります。また、アンケート投票や視聴者傾向の分析等の機能も充実しており、動画にパスワードをかけたり、指定したドメインだけに動画の埋め込みを許可したりするなどの細かいプライバシー設定もできます。定期的にWebセミナーやライブ配信を行いたいと考えている企業の方には、Vimeoも選択肢として入れておくことをおすすめいたします。

※1:前身である「Mogulus」は、世界最大のライブストリーミング企業の1つでした。

<IBM Cloud Video(旧称:USTREAM)>
BtoB配信が主のコンテンツとしたIBM Cloud Videoなのですが、先ほどご紹介したFacebook Liveよりも企業色が強く、大規模なライブ配信に向いていると言われます。また、Vimeoと同じく動画の埋め込み制御やパスワード保護などプライバシー面の設定できるほか、ライブアンケートなどの双方向性機能も充実しています。配信規模によって選べるプランが用意されており、月額13,800円から利用できます。

IBM Cloud Videoは大人数の製品発表会や事業説明会、セミナー、研修等で使われている傾向があり、そういった理由から、一度始まったら視聴者がなかなか離れにくいという面があります。一方、画質はフルHDまでしか対応しておらず、この点に対して若干物足りなさを感じてしまう方もいるでしょう。

よくある活用パターン

<株主総会などIRイベント>
先日のブログ記事「オンライン株主総会の検討」でご紹介したように、ライブ配信においての株主総会の開催も多く見かけるようになってきました。さらに最近では、経済産業省主導で「ハイブリッド型バーチャル株主総会」への取り組みも始まり、ライブ配信を活用した非対面IRイベントがますます普及していくと予測されます。

<講演会・セミナー>
講演会・セミナーを動画として配信することを「Web講演会」「Webセミナー」や「ウェビナー(ウェブ+セミナー)」といった呼び方をすることが多く、自社スタッフだけで実施しやすいライブ配信の一つです。講師1名で資料を中心にライブ配信を行うというスタイルが一番多く見かけるのではないでしょうか。視聴者の関心を維持し飽きさせないように工夫をするのであれば「アンケート実施」「複数人演者」などの構成や、チャット機能を使ってリアルタイムでの質疑応答を行うといった演出も考えられます。

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<製品発表会・企業説明会>
国内外問わず、よく見かける配信パターンの一つとして「製品発表会」が挙げられます。NTTドコモやソフトバンクなどの大手企業が数年前より製品発表会をライブ配信で行っていたり、新型コロナウィルスの影響を受け、数多くの企業が就活生に向けて企業説明会をライブ配信したりする事例も増えています。配信後はアーカイブとして保存したり、動画を再度公開したりすることで視聴者が増え続けるなどのメリットから、活用する企業は今後も増え続けると予想します。

<EC利用(ライブコマース)>
ライブ配信において、ECサービスが主流となっている中国。そのライブコマースの発展が最先端であり、ライブ配信サイトから購入、決済サイトまで誘導するという流れは一般化しつつあります。例えば、中国で最大規模のECサイトである淘宝(タオバオ)では、動画視聴中にクリック一つで簡単に商品を購入できたり、大型ECモールでも店員やスタッフがライブ配信を行うことでリアルタイムでの販売を実施したりするなどの事例が見られます。

日本国内でもライブコマースに対する認知度が高まりつつあり、最も認知度の高い世代は10代となり、全体の認知度は30%となります。大きな市場となっているライブコマースは、今後もますます利用者が増加していくと予測されています。
(※参考: https://honote.macromill.com/report/20180705/

広がるライブ配信

それぞれの用途に合ったプラットフォームを使用することにより、手軽にできるようになったライブ配信。上記でご紹介した活用方法以外にも、様々な活用事例が存在しています。ここからは、広がるライブ動画配信の活用事例及び今後の可能性についてお話していきたいと思います。

<地方イベントにおけるライブ配信>
新型コロナウィルスの感染拡大により観光地に出かけられない現状では、「観光」+「ライブ配信」で生み出されたコンテンツがますます増えており、今までより注目されるようになりました。海外では、観光産業振興に向けた施策として、博物館によるオンライン展示やバーチャル旅行などのサービスも展開されつつあります。その中で、地方イベントにおけるライブ配信の可能性に期待が寄せられています。

日本では年間を通して様々なイベントが開催されており、その大多数が地方開催のイベントとなります。例えば、新潟県で開催されている「長岡まつり大花火大会」や京都府の平安神宮の「時代祭」など、伝統的な花火やお神輿は国内外の観光客をひきつける魅力的なコンテンツとなっています。今まで、一般人の参加者が地方イベントの動画を投稿し配信することが多いのですが、イベントの主催団体などが公式で配信をする余地はまだまだあると考えます。

また、地方イベントにおけるライブ配信はただ視聴者を楽しませるためだけではなく、イベントの主催者にとっては収入を得る一つの方法にもなります。今まで現地に足を運ばなければ見られなかった地方イベントが国内外にライブ配信されることにより、日本の文化を知ってもらい、地方に眠るコンテンツをさらに深く広く拡散できる点から、観光プロモーションといったライブ配信の活用方法も期待できるでしょう。

<VR(仮想現実)ライブ配信>
ライブ配信先進国だと言われている中国では、ライブ配信サービスのユーザー規模は4億3300万人(2019年時点)で、全ネットユーザーの50.7%を占めます。その一方、話題の豊富さに比べ、ユーザー数は増えている傾向がなく、ここ2、3年間は一進一退を繰り返しているという状況です。この現状から、コンテンツの拡充を緊急課題として重視されるようになり、その施策の一つとしてVRライブ配信が挙げられています。中国では今、伝統行事やスポーツイベント、企業による記者会見のライブ配信にVR要素を取り入れるという事例が多く見られるのですが、これからはさらなる革新的な活用方法が期待されます。

VR情報専門メディア「青亭網」の統計によれば、2019年、全世界のAR/VR関連投資規模は23億4000万ドル(日本円にして約2470億円超)であり、そのうち中国の投資規模は11億6500万ドル(日本円にして約1224億円超)、全世界の50%に近いことが分かります。こうして見ると、中国はAR/VR研究や分析に注力しており、ライブ配信における実需も高いことから、AR/VRライブ配信の新時代をリードすると考えられます。

また、日本国内でもソフトバンクとNTTドコモが2020年1月に5G時代を見据えたVRライブ配信サービスの開始を相次ぎ発表しました。 (※参考: https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/03574/

最後に

いかがでしたでしょうか。ライブ配信サービスは、今ではBtoC事業での利用が目立つ印象もありますが、相手の心を動かすという目的はBtoCでもBtoBでも共通であり、今後はBtoBの企業による画期的な事例も増えてくるでしょう。日頃から様々な形で情報発信を行っていたり、商品・サービスの認知度を高めたいと施策を考えていたりする方であれば、これを機に新しいチャレンジとしてライブ配信を検討してみるのも良いのではないでしょうか。ライブ配信を行うにあたってご不明な点や不安に思う点がございましたら、お気軽に弊社までご相談いただければ幸いです。

投稿者:王

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