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2020.07.09

オンライン株主総会の検討

梅雨の時期=定時株主総会という印象があります。蒸し暑く外出しづらいこの時期に開催しなくてもいいのではないかと個人的には思いますが、6月に株主総会が集中するのは3月を決算期としている企業が多いというのが理由です。会社法で定時株主総会の開催時期については「毎事業年度の終了後一定時期」としか記載はありませんが、株主名簿の効力と有価証券報告書の提出期限が、いずれも事業年度終了後3ヶ月以内となっていることに関係しているためです。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、株主総会をやむなく延期した企業、書面での決議のみの取り扱いをした企業、オンライン化に踏み切った企業、延期せず通常開催した企業等対応が分かれました。テレビ会議やウェビナーが盛んになっているため株主総会のオンライン化も簡単にできるように思いがちですが、定時株主総会をオンライン化するためには解決しなければいけないハードルがあります。

株主総会の開催方法

オンライン導入という切り口で株主総会の開催方法を見た場合、経済産業省では次のように定義しています。

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バーチャル株主総会とはバーチャルオンリー株主総会、ハイブリッド参加型バーチャル株主総会、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会の総称であり、リアル株主総会へ赴かない株主にも考慮された株主総会です。

各種株主総会とその特徴

<リアル株主総会>
リアル株主総会とは従前より行われている、開催会場を用いての集合型の株主総会です。新型コロナウイルスの感染が最も心配される手法でもあります。リアル株主総会開催のメリットは、従来通りの開催方法であるがゆえに分かりやすいという点です。しかし、この開催方法では新型コロナウイルス感染症のような3密を避けるべき状況下で適した方法とは言い難い面があります。また会場費や運営スタッフ、株主への手土産など多くのコストがかかっているのも事実です。

    株主のメリット
  • 従来通りの開催方法で安心感がある
  • インターネット環境が不要である
    企業のメリット
  • 従来通りの開催方法のためマニュアル化されている場合が多く、取組みやすい
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<バーチャル株主総会(バーチャルオンリー株主総会)>
バーチャルオンリー株主総会の場合は、取締役、監査役、株主が一堂に会することなく、インターネット等の手段を通じて株主総会を行うことになります。バーチャル株主総会の最大メリットは、開催地から遠方であるといった理由などから株主総会に参加ができない株主が総会に参加・出席できる点です。リアル株主総会を伴わないことで、出席者全員がインターネット上になり、総会の出席環境に大きな差がなくなるという見方もできます。これから株主総会を始めようとする新しい企業、若年層の株主が多い企業には向いている開催方法ではないでしょうか。

やはり、インターネット環境の整備の必要性などのリアル株主総会では起きえなかったデメリットも存在します。その中で最も危惧されている事項の一つに、なりすましの危険性があります。例えば、リアル株主総会では受付で本人確認や議決権の行使の未済の確認を行いますが、そのような受付で行っている確認業務をインターネット上で行う必要が出てきます。バーチャル株主総会に出席した場合、議決権行使や審議における質疑等が行えるため、なりすましが株主総会の運営に与える影響は相当に大きい可能性があります。

また、平成30年11月13日の国会法務委員会において、「空間のみで行う方式での株主総会、いわゆるバーチャルオンリー型の株主総会を許容するかどうかにつきましては、会社法上、株主総会の招集に際しては株主総会の場所を定めなければならないとされていることなどに照らしますと、解釈上難しい面があるものと考えております」との見解が示されていることもありますので、バーチャルオンリー株主総会の開催には十分な検討が必要と言えます。

    株主のメリット
  • 株主総会開催場所に出向く必要がない(時間・交通費等の削減)
    企業のメリット
  • 大きな会場を用意する必要がない
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リアル株主総会とオンライン上で行われるバーチャル株主総会を組み合わせたものが「ハイブリッド」です。リアル株主総会を開催しつつ、バーチャルでも行うものになります。無理にオンライン化をすすめた場合、インターネットの環境設定をはじめとした問題が浮上する可能性が考えられますが、ハイブリッドにすることによって、個々の株主にとって都合の良い方法を選ぶことができるようになります。ハイブリッドバーチャル株主総会には「参加型」と「出席型」があります。これは会社法上の出席にあたるか否かで分類されています。

<ハイブリッド参加型バーチャル株主総会>
会社法上の出席にあたらないのがハイブリッド参加型バーチャル株主総会です。この型は、リアル株主総会のライブ配信を傍聴するような形態になります。いわば配信型であり、双方向通信ではありません。会社法上の出席にあたらないこと、また双方向性でないことから株主は議決権を事前に行使して、株主総会に臨むことになります。出席にあたらず株主総会のライブ配信を傍聴して何の意味があるのかといった声が聞こえてきそうですが、多くのメリットがあります。

    株主のメリット
  • 議決権を事前に行使しているため、リアル株主総会やハイブリッド出席型株主総会に比べ途中参加・途中退場がしやすい
    企業のメリット
  • 質疑や動議を受け付けないため、リアル株主総会との間で均衡が保たれる
  • チャット機能を使用し議長の判断でコメントを取り上げることも可能
  • 株主総会における議決行使はリアル株主総会のみとなるため、運営がしやすい

<ハイブリッド出席型バーチャル株主総会>
ハイブリッド参加型と違い、会社法上の出席ができる形態となります。出席型は開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されていることが重要なファクターになります。

    株主のメリット
  • 遠方株主の出席が可能となり、質疑や動議を受け付けられる
  • 質疑や動議を踏まえた上で議決権行使ができる
    企業のメリット
  • より多くの株主の意見を取り入れることができる

このようなメリットがある反面、質疑や動議を受け付け、議決権を行使し、すぐさまリアル株主総会に反映できるシステムの構築や人員の確保、システムの不具合によりバーチャル株主総会出席者が議決権行使できなくなる可能性を排除しなければならないといった問題をどう解決するかが要となってきます。

各株主総会の相違点・比較

これまでお伝えしてきた4種類の株主総会はいったい何が違うのか、整理してみました。

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議決権行使の効力と取り扱いの関係

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簡単にオンライン株主総会をはじめるなら

もうお気づきかと思いますが、比較的簡単にオンライン株主総会を行うにはハイブリッド参加型バーチャル株主総会が適しています。株主総会の透明性の向上・情報開示の充実のためのサービスとして招集通知に明示し、個別のID・パスワードを用いてライブ配信を行うことで実現可能となるからです。万が一、システムトラブルが起きたとしても何よりこれまで行ってきたリアル株主総会の品質・運営を損なうことなく付加サービスとして導入できる点に最大のメリットがあります。質疑や動議を受け付けないからこそ、議決権を事前行使とするからこそ、株主総会に関わるスタッフの多くをリアル株主総会の運営に割くことができます。

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最後に

このコロナ禍の下でライブ配信を手掛ける弊社がお役に立てる方法はないかと考えたときにオンラインで株主総会を行えないものかと総務経験のある私が検討した結果をお伝えしました。正直に申し上げて、バーチャル株主総会という言葉を初めて聞いた時には、耳なじみしない感じがしましたが、あえてバーチャルという用語を使用しているのは、ライブ配信だけでなくオンデマンド配信といったオフラインも含まれているからだと今は納得しています。株主総会に参加できない株主、これから株を購入しようと検討している個人投資家に向けた映像配信は、CS(顧客満足度)向上に一役買うことにもなります。決算書を読むより決算についての説明を見たほうが分かりやすいのは言うまでもありません。映像で分かりやすく伝わりやすく、そのお手伝いができれば幸いです。

投稿者:吉川