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2020.06.10

Web 会議・ライブ配信ツールを利用したオンライン MA

コロナ禍で求められる映像制作の工夫

映像制作におけるリスクヘッジ

映像制作のワークフローでは多くの人が関わることになります。そのため、現在の新型コロナウイルス感染症の流行下において、各テレビ局が総集編や再放送などこれまでの作品を活かした番組を放送し、3密によるコロナウイルス感染の予防対策に努めている状態です。残念ながら感染症の早急な完全収束が見込めない今、これまでの体制を変えていくことが急務となっています。そこで、先日のブログ記事「アフターコロナに向けた映像活用」でも少し触れましたが、今回はオンラインMAについて、少し掘り下げたいと思います。

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MAとは

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、今一度MAの概要をご紹介します。
MAとは、Multi Audioの略で、編集済みの映像にセリフやナレーション・BGM・効果音などを加え、音質やバランスを調整、音の最終仕上げを行うことを指します。
大まかな流れは下記となります。

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上記はMAスタジオにて作業を行います。
使用スタジオの規模にもよりますが、一般的なスタジオはコントロールルームと収録ブースで構成されており、MAを行う日にはクライアント、代理店、制作会社、監督、音響効果、ミキサー、ナレーターなど、たくさんの人が集まって収録を行います。

オンラインでMAを行うには

MAで必要な環境

無音の映像制作ではない限り、MAの作業は必要な工程です。しかし前述の通り、MAスタジオでは複数の担当が一堂に会することになるため、密閉、密集、密接の3密になりかねない状況となってしまいます。
それではどうやってこのリスクを回避するべきでしょうか。
考えられることは、MAスタジオの面積は限られているため、スタジオで立ち会う人員を減らし、人と人との距離をとることです。MAに必要な人員がスタジオで物理的な距離をとり、オンラインで十分な内容はリモート環境=オンラインで確認を行えば良いということになります。
今までMAがオンラインでほとんど行われていなかったのには、理由があります。特に1番の理由として挙げられるのはセリフやナレーションの収録関連です。音声は再収録が難しく、そのため内容に責任を持って判断できる人員が複数人で立ち会いながら収録を行う必要があります。また、BGMやナレーションの音量バランスなどもその場で判断する必要があります。オンラインでは、ナレーションの言い回しや間違いは発見できても、微妙な音のバランスは判断しにくい環境になります。
では、このコロナ禍の下でどのような手法をとれば、最善のオンラインMAとなるのでしょうか。

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オンラインMAの手法

最低限必要になるのは、MAスタジオの収録を限定的な形で共有すること。そして、指示やチェック等の意見をリアルタイムで集約できること。
MA参加者の環境はそれぞれ異なりますので、案件ごとに必要となる対応は変わってきますが、弊社では新型コロナウイルス感染症流行期間に、ZoomやTeamsを使用した双方向Web会議方式のMAと、YoutubeLiveやVimeoLiveの一方向型ライブ配信方式のMAを行いました。

    Web会議方式に関して(双方向)
  • Webカメラ搭載のノートパソコンとWi-Fi環境があればすぐに開始可能
  • 双方向でリアルタイムの打ち合わせのため、ナレーションの言い回しや挿入箇所の確認がしやすい
  • 音声の再現性は会議用途のため期待ができず、音量確認やバランス確認は難しい
  • 動画配信用途には向かない
    ライブ配信方式に関して(一方向)
  • 配信機材が必要となる(ノートパソコン、キャプチャーボード、カメラ、Wi-Fi環境など)
  • 収録や配信方法にもよるが、Web会議方式より音声の再現性が良く、動画も配信可能。
  • 配信遅延がある
  • 一方向配信のため、双方向でのやりとりを考える必要がある(メール、チャット、電話など)

クライアントがMAで何を重要視したいか、利用するMAスタジオがどこまで対応してくれるかを事前に確認して、配信するソース(ナレーションのみ、映像+ナレーション、映像+ナレーション+スタジオトークなど)から配信手法を検討する必要があります。

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評価と課題

オンラインMAにおける実際の印象

プロデューサーの立場で感じた部分として、ライブ配信ではやはり対面時と比べ、クライアントの発言が最小限に留まっていたように見受けられました。また、ライブ配信方式であってもWeb会議方式であっても遅延は生じます。全く遅延しないオンラインは存在しないため、MA作業ペースにズレが生じ、次第にクライアントのチェック・返答は、追ってチャットでバックされる形になるシーンもありました。
そういった状況から、クライアントの意図や細かい指示・要望を監督に伝えることが難しくなり、結果的に双方のコンセンサスが得にくくなる傾向があります。そのため、いつも以上にプロデューサーがペースメーカーとなり、ハンドリングすることが求められます。
今回より注力した部分として、作業ポイントを見つけながら電話確認する時間を持ち、ブロックごとにコンセンサスを必ず取っていきました。一見簡単なことに見えますが、収録時間のコントロール意識、作業効率とのバランス調整、コミュニケーションのずれが生むストレスの緩和、また作品クオリティに対する妥協しない意識、発露の意識などをいつも以上に持たなければならないので、苦労したことを覚えています。

求められるオンラインMAと今後の課題

行動の制限下でも、さまざまな事情で納品時期の変更などが難しい案件も見受けられます。そんな中、今まで当たり前として行ってきた業務を改めて見直し、可能な限りリスクを排除して新しい手法を模索していくのは、企業として求められている体制だと思います。
しかしながら、これらの仕組みは一朝一夕で完全に作り上げることができるものではありません。今回の件でも、高いクオリティが求められる音声の収録に対して、ライブ配信というネットワークを介して圧縮されたデータで確認を行うという手法になりますので、実際その場で耳にするよりもBGMの音量とナレーションの音量との兼ね合いや細かな発音や抑揚の部分が伝わりづらい面も生じてしまうのは事実です。そのような中でもクライアントの環境に合わせ、ノウハウを生かしたシステムを組み上げるのも、映像制作会社のスキルとして求められていく分野だと思われます。

今後の展望

新型コロナウイルス流行の影響は活動自粛だけには留まらず、これまでの方法や考え方の捉え直しの機会となりました。今後はそういった意識改革と技術革新に伴い、人の集合そのものにも変化がもたらされ、通信・動画の活用は新たな局面を迎えます。
弊社で行うMAに関しても、クライアントの中には遠方から、県をまたいで出張されるケースもよくございますが、こういった機会での見直しを行ったことで、今後はオンラインMAの需要が、次第に高まっていくものと思われます。
弊社でも、今後もオンラインシステムに注力したサービスを考えております。オンラインMAを試してみたい方は、お気軽に弊社までご相談いただければと思います。

投稿者:佐田